にんげんのそんげん検査

久しぶりにその名を聞いた。ある日、保育園の娘(3歳2ヶ月)用の連絡ポケットに、小さな茶封筒が入っていて、見ると「ぎょう虫検査」と書いてあった。おー!
家で取り出すと、水色のフィルム。あの、笑顔で自分のお尻にフィルムを貼っている天使(?)の絵。懐かしい懐かしい。ニーニャが寄ってきて「シール? あそべたい!」と相変わらず間違った活用で奪おうとするので、「明日の朝ね。お尻にぺったんしていいんだって。やったねー!」と盛り上げながら留め、手の届かない棚の上へ。満更でもない様子の娘。こりゃ、ゲーム感覚で、スムーズにできるな。

と思ったら大間違い。翌朝、おもむろにフィルムを出すと「いやー! これ、ぺったん、しないでー!」と逃げ回る。「でも、おしっこの前にしなきゃなんだって。じゃないと、ムシムシさんいるかわかんないって」「いーやーだー! おしっこしなーい!」「じゃ、ホラ、お着替えだけしよう。まずズボン脱ごっか」「いーやー! おきがえいらない! ぺったん、ない!!」 布団を敷き詰めた四畳半の和室ぐるぐる早朝追いかけっこ。うーむ。助けを求めて仰ぎ見れば、ツレは「どちらの味方にもなりがたし」みたいな顔して、突っ立っている。挙句、「そりゃ、そんなやり方したら、ニーニャも嫌がるさ」。カチン。

「目の前で切羽詰ってる状況にいる現場の人間を批評するな! ってこないだも言ったけどさ! そんなヒマあったら加勢すれば。だいたいこれは私の役割か? あんたもやっていいんだけど!」という意味のことを1/10くらいの単語数で伝えつつ、こりゃもう強硬手段しかないとニーニャを押さえつけてズボンとパンツを同時に引っ張り下ろし、「押さえてて!」とツレに指示をとガンを飛ばし、蒙古斑の残る小さなお尻をぐっとひろげてフィルムをペタン。ニーニャ、号泣。枕に顔を押し当てて、ぐわんぐわん泣いている。ようやくひと仕事終えて、ふと我に返り、この状況を見て思う。うん、これは、人間の尊厳という意味で、たしかに……。

しかして、ぎょう虫検査は、2日連続で行わなければならない。なのでその日は1日中、翌朝の作戦を練り続けるた。やっぱり、自らトイレに行くってタイミングでズボンとパンツおろしたときに、「おやおやご覧U.F.O.だよ」とかって気を逸らせて、そのときペタン、だよなあ。うん。そのあと、プレミオ(ご褒美)で、なんかあげよう。うん。

そうして迎えた翌朝。結局待ちきれずに、「トイレ、行く?」と促す私。「うん」妙に従順な娘。そしてこちらも変に神妙な様子のツレが、娘のズボンとパンツを降ろしつつ、眼で私にサインを飛ばす。ちゃんとノールックでスタンバった私、しかしU.F.O.発見! とはさすがに言えず、「あっ、これ今日もしなくちゃなんだって、へぇー。そっかそっか」などと小声で呟きながら、お尻をひろげてペタリ。あれ? 泣かない。「冷たくない?」「だいじょうぶ。ニーニャ、ちよいから」 フィルムを完成形にして封筒にしまってから、訊いてみた。「あのさ、知ってたの? ママがぺったんするの」「しってたよ。きょう、なかないだったでほ? ニーニャ、ちよいんだよー」

そっかあ。そんなら騙まし討ちみたいなんじゃなくて、ちゃんと説明して同意を得ればよかったね。また君を見くびってたよ。ごめんなさい。

あー、しかし。私もこんな騒ぎしてたのかね、初めてのぎょう虫検査のとき。

[rakuten:meditake:10001942:detail]


追伸:「小さな命と一緒の時間を楽しみたい」プロジェクト、急ピッチで進めてます。随時、ご案内いたしまーす。もちろんひとりじゃまったくできないことですので、今後、できれば、どうぞみなさんのお智慧を貸してください。お願いいたします。