ニーニャ、ちんぱい

昨日、俊足ディエゴを追っかけて派手に転んだニーニャ。起き上がった瞬間、デコに超特大のたんこぶができていた。多動児の母にして赤十字勤務のエバが、即座に「氷で冷やすべき」と判断。以前ディエゴなんて鶏卵大のたんこぶができたのよ、などという話を聞きながら彼女の家に駆け込む。傷口を水で洗って、ニーニャのデコに冷凍コーンの袋をぎゅー。

「ぎゃー!」 (たぶん驚いて)号泣するニーニャ。エバが、彼女の好きなお菓子や○ッキーのシールを手に握らせる。おかげでニーニャは泣きやんだが、今度はディエゴが泣き出した。それを見てまたニーニャが泣く。収拾がつかないので、横抱きにして強制帰宅。

鏡でたんこぶを見せ、「これ貼るからね」と説明して、冷却ジェルシートをぺたし。(ほんとうは冷却ジェルシート大嫌い) ニーニャはそのまま泣き疲れて寝た。今朝起きると、「お岩さん」は「おみやげのエアーズロック」くらいまで小さくなってました。ホッ。エバによると、なんでもこの部分は肉が少ないため、血が一気に噴き出すのだそう。というわけで、急激に大きくなるデコのたんこぶは即冷却、です。


ところでディエゴは夜、「どうして泣いたの?」と訊かれると、「ニーニャ、ちんぱい(「心配」に相当するスペイン語の発音ミス)」と答え、そこで思い出したのか、さらに泣いちゃったのだという。すごく心の優しい子なのだ。で、ここで話は急に、最近話題の「ミラーニューロン」に飛ぶ。ちょうど読んでいた本『脳のなかの論理−脳倫理学序説』(マイケル・S・ガザニガ、紀伊国屋書店)にも書いてあった。

サルばかりでなく人間でも確認されたそうだが、自分自身が何かの動作をするときだけでなく、人が動作をするのを見ているときにも、(自らがその動作をするときと同じ)脳波の反応が現れる。これを司るのがミラーニューロン・システム。このシステムこそが、人間の進化の過程における言語の前身だ、と説明する学者もいるらしい(同書の10章)。いま自分の属する世界にすでにある、意思疎通のためのルールを、ひと(やサル)はおそらく「模倣」をつうじて学ぶ。

たぶんディエゴにはこのミラーニューロンが、ふんだんにあるんだろう。「脳は自分自身の経験だけでなく、他者が経験したことも感じるようにできている」らしいが、ディエゴの場合は、「『ものすごく』感じるようにできている」のだ、きっと。だからセンシティブで、だから溢れる思いをうまくコントロールできずに、叫んだり暴れたり噛んだりしちゃう。ちなみに、サルにはないが人間には、「他者の行為を観察しているとき、その行為を自分自身が実行してしまわないように抑制する」脊髄の働きがあることが、最近わかったという。ディエゴの共感力もやがてその脊髄でコントロールされるのか、あるいは、別の表出方法を取るのか。なんせ、心の優しい、ええ子なんです。