歌えないアンサーソング

ほぼ一か月の間更新をさぼっておりました、オット初々です。無断欠勤、申し訳ありません。言い訳させてもらうと、年度末、年度初めの学校の仕事に、3月末の学会東京出張が重なってバタバタしておりました。と、いうのは表向きの理由。本当は“書けなかった”のでした。その発端は、3月30日に投稿された初々さんの『家事をめぐる温度差』。この、妻からのメッセージに対してオットはアンサーソングを歌わねばらなかったのですが、何をどう歌えばよいのか、今までことばにならなかった、というのが正直なところです。

記事を読んで、というより、記事が書かれれる前に夫婦の会話の中で顕わにされた「オットはサブとしてしか家事に関わらない」という事実は、私にとって少なからずショックでした。自分の中でそれに気がつかないままそれを当然としてきたことを突き付けられたからでした。恥ずかしながらそれまでは、私は自分のことを「家事もよく手伝い、子どもの世話もよくする良きオット」だと思っていたということですね*1。このセリフの前に“世間のオット達と比べて”という枕詞が付いているのですが。

しかしそれは、コメントで初々さんも書いていますが、あくまで自らを“サブ(手伝い)”の立場に安住させていることにほかなりません。自らをサブの立場に置くということは、「子育てや家事のメインの責任者は妻である」と主張することと同値です。そして、サブの立場で家事や育児に関わっている以上、いくら「手伝っても」、世のオットの平均以上に家事、育児を行ったとしても妻は満足しない。ホッチキスさんの奥さまの言葉を借りれば「マイナスじゃない」程度にしか評価されない。この、『自らを“サブ”の立場に置いて、当事者性から降りておきながら、自分は「良きオット」であると思っていた自らの浅はかさに気づかされたこと』がショックだったわけです。

で、それがショックであるならば、次の瞬間から反省して、家事、育児に対して当事者性を発揮して、全体を見て動く、ということをすればいいのですが、どうも釈然としない自分も一方にあったのです。「オレが悪いのか?」*2という気持ち。

この気持ちを少し整理して書いてみると・・・・いや、あまり整理してませんが。
仕事に行って、神経も体力も使って働いて帰ってきて、夕飯後にさらに家事を「手伝おう」として、全体が見えていなかったから*3と言って、わたし、そんなに反省しなきゃならんのか? だいたい、こっちは妻、子が寝てからまた仕事してるんだ。わたしがメインでやってる仕事、手伝ってくれたことある? いや、手伝ってもらおうなんて思わないけど、私が仕事をしていることをどう思っているのだ? わたしは評価されてんのか?
と思う一方で、私が昼間働いている時間、妻だって遊んでるわけじゃない。同じだけ働いているのだ。だから仕事から帰って、妻と協力して当事者性を発揮して家事をするのは当然なのだ、とも思う。でも、なんだか釈然としないぞ。

こんな思いが次々湧いて出てきて、一方で反省する私と、それを受け入れがたい私が葛藤していて、アンサーソングが書けなかったのでした。で、いろいろ考えていると、たとえば「相手に感謝の気持ちを伝える」ということだって、もしかすると、自分をサブの立場に自動的においてしまう構造を持っているのかもしれない、と思うわけです。オットから妻への「いつも家の中のことや、子どものこと、ありがとう」という感謝のことばは、自分が当事者からすでに一歩後退していることを意味するのではないか。ということは、私が毎晩言ってきたことばが妻だけをを家事・育児の責任者の立場へと追いやってきたのか? あるいは逆に妻の夫に対する「いつもお仕事ご苦労様」ということばは、家計に対する妻のサブを意識させ、メインで支えていないことの後ろめたさを引き起こすのか? だから(一般的に)オットはあんまり感謝されないのか? などなど、考えはさらにややこしいことになってくるし。

私がさぁ、「男は外、女は家」的なジェンダーアイデンティティを持っているなら、私は楽なわけです。が、幸いなことにか残念なことにか、世の男性もフェミニズムの洗礼を受けてしまっているわけで、女性が育児・家事労働にあるべき姿を見出せないように、男性も、「仕事だけしている私」を自ら「よし」と認められない。その上、たとえがんばって「手伝っても」妻には認められない。その妻も、自らを仮の姿としか認めていない。こりゃどちらにとってもあんまり幸せなことじゃないよねぇ。いったいどうすりゃいいの?

というのが、2週間ほど前の状態だったわけです。今はこれを書いていることでお分かり頂けるように、ややこしい考えはひと段落しております。さて、どんな形で決着したのか、ということは、2週間後のブログに・・・・書くかもしれません。世の奥様たちからは「フン、何を甘えたことをいってんだか」と鼻で笑われちゃうのか? 俺はこのブログを続けていけるのか?

*1:自覚はしていなかったつもりなのですが

*2:普段は一人称で「オレ」なんて使いませんが、こういう場合は「オレ」がしっくりきますね

*3:具体的にはお茶碗を拭こうとして、洗い物をしている妻の横に立ったが、まだ拭くべき食器がなかったから、他の家事に気が回らずまた茶の間に行ってお茶を飲んだ、ということ。もちろんこの行為に表わされる私の意識が問題なのですが