迷惑カーチャン

supply72009-04-01

こちらは新学期は9月、しかもウソをついていい日も今日じゃなくて12月28日(キリストの生誕を恐れてヘロデ王が殺した2歳以下の「無垢な」子どもたちの日)なので、のほほんと過ごしている……はずが、なぜか今朝は4時間かけて保育園に怒りと涙の嘆願書を書いてました。

以前少し触れましたが、去年の担任の人間味溢れる鼻ピアスのバネッサ先生が保育園を去り、人望厚かったロサ先生も懲罰人事で例年の2-3歳児クラスから0歳児クラスに異動という大波乱で幕を開けた今年度の「太陽と月保育園」。新任のベレン先生がようやく馴染み、本人も画家としてマドリードで初の個展を開いたり、カーニバルでバニー姿を披露したりと打ち解けてきた矢先の先月半ば、彼女のお母様が倒れたとの急報。しかも危篤とのこと。故郷のガリシアでは女子が親の面倒を見なければならないとのことで、ベレンは急遽荷物をまとめ、マドリードを去った。

センシティブな騎士ディエゴ君は、この突然の別れを受け入れられない。彼は急に荒れるようになった。その矛先は彼のもっとも信頼するひと――つまり家族と、保育園ではニーニャに向けられる。騎士のはずのディエゴくんが、折に触れ、ニーニャをドンと突き飛ばす。ちゃんと怪我しない程度、とはいえ、もちろんニーニャ号泣。それを見て走り去るディエゴはほんの最初こそ嬉しそうだけど、すぐに愕然として立ち止まり、さんざん悩んだ挙句、ニーニャの好きなオモチャや草花を手に戻ってくる。ニーニャもそれでいいらしく、またふつう通りに遊ぶ。私は、こういう「他人の怒りを受け止める経験」もええやないの、と気にしていなかったけど、ディエゴの両親は心配して毎夜語り合っているそうで、このあいだはニーニャの大好きなPOCOYOのオモチャを「補償」として買ってきてくれたりした。いーのにー。でも「加害者」側になると、これくらい気を遣うもんなのかな。

クラスのヘルパーから昇格人事でクラス担任となった若いロレナは、「私がこのクラスをみなきゃ」と張り切っている。まずはディエゴね。そして彼女は罰として、食堂でディエゴとニーニャの席を別々に離した……と私は聞いていたのだけど、実際にはディエゴだけクラスメートとは離れてひとりで食事をさせられているらしい。「それじゃ刑務所じゃん!」と怒ると、ディエゴママは疲れ果てた様子で「まあ、数日、様子を見てみるわ」と言った。

そして今朝。ニーニャを教室まで送って戻ったら、入口の門が閉まっていた。外では10組前後の親子連れが途方に暮れている。たしかに、送迎終了時刻から2分過ぎている。やがて新任のスタッフが来て鍵を開け、私たちを外に出してくれたが、外のひとたちは遅刻だから入れませんと宣言した。バタンと鉄の門が締められた瞬間、おばさんに連れられて外で不安そうな顔で待っていたニーニャのクラスメートのジョアンナが、先週公園でニーニャの食べていたキンダーのエッグチョコを無理やり奪い取って自分の口に押し込んだほど強気な子が、ひしゃげた顔になってうわーんと泣き出した。「私は悪い子、だからもう友だちと一緒にいられないんだ!」くらい、思ったんじゃないだろうか。

私は呼び鈴をリンリン鳴らし、「ちょっとちょっと、規則はわかりました、それを守るのも大事です、でもここにジョアンナがひしゃげた顔で泣いている、次の開門まで彼女をここで泣かせとくんですか、もう『罰』なら充分でしょう!」と、外国人のめちゃめちゃスペイン語で叫んだ。結局、運営母体派遣の偉いスタッフ(実はロレナの彼氏)が出てきて、存分にお説教をした後で、残りの子どもたちを入れてくれた。その背後に、「この学校では、共に生き、分かち合うことを教え、互いに学びます」という看板が見える。なんのこっちゃ。このままじゃ、いつニーニャが校門に挟まれる事故があってもおかしくないよ。

ということで、今日はカリカリと「ちょっと最近ひどいです。あの教育哲学も『規則』でしょう、思い出してください。締め出されたジョアンナ、食堂でひとりぼっちのディエゴは、この指導をつうじて『共に生き、分かち合うこと』を学ぶでしょうか?」という手紙を書いてたのでした。こんなことしてちゃニーニャの心証が悪くなるかもしれんばってん、ごめんよ、かーちゃん黙ってられんっちゃん。
うー、でも、子どもからしたら迷惑だろうなあ。

写真はまったく関係なく、中国食材店でみつけた日本風お菓子。「おいしさアッつ」…見た瞬間、「世界のナベ……」と呟きました。ちなみに「天然こくもの添加」とのことです。