ヒッピー・ハッピー・シェイク

supply72008-12-17

ニーニャの誕生日のプレゼントに、彼女の騎士ディエゴ君ママのエバからもらった、キャンピングカーのおもちゃ。付属の人形は3体、お兄ちゃんとお姉ちゃんと犬。これがどう見ても、フラワー・チルドレンなルックス*1 いまどき! あまりにおかしいので、ジャニス・ジョプリンのCDと一緒に撮ってみたらやっぱりしっくりきた。そういえば私の誕生日にはエバ、「ハッピー・ヒッピー」という石鹸をくれたっけ。いったいひとをなんだと思ってるんだ。…ヒッピーか。「H」を発音しないスペインでは、「イッピ」ね。

イッピの子の「エスキモーちゃん」は、初めてのじんましんもようやくほぼ落ち着き、元気に鼻水垂らして保育園通ってます。昨日は、先日知人宅で知り合ったばかりの日本人ママ宅を襲撃。待ってくれていたのは、いわゆる駐在員の奥さんおふたりと、ともに1歳のお子ちゃんたちふたり。今年の夏に0歳児を連れて移住したおふたり(すごいね!)によると、スペインの印象は、子どもに優しい、ということ。ジジババだけでなく、成人男性まで。スーツのひとが子どもとすれ違いざまウィンクする、なんて、日本ではなかったらしい(たしかに想像できない)。

スペインでは、ビジネスマンもパンクあんちゃんも子どもと目が合えば微笑み、さらにあやしてくれるなんてことが、けっこうある。「エグゼクティブ・ビジネスマン」の時も「ぱんくす・のっと・でーっど」の時も、ファミリーの一員である意識というか基本を失わない。そこらへん、場によって100%「ビジネスマン」「不良息子」「従業員」「お客様」を演じがちな日本人との、大きな差かも。

そう、たぶん日本人は、演じるのが好き。それは、古事記に「なりなりてなる」系の記述が多いことからもわかる(かもね)。手持ちの5年前の「ピタゴラスイッチ」で流れる、「ぼくのおとうさん」という歌も。お父さんは「会社へいけば会社員」、「電車に乗ると通勤客」、「歯医者へ行けば患者さん」…となり、帰宅してようやく「ぼくのおとうさん」になる、という歌。一方スペイン語には、『ユリシーズ』の訳者としても知られる永川玲二氏によると、「なる」という基本動詞がない。英語のbecomeに相当する単語がないんだって。なくてもやっていける世界がスペイン。お父さんは、お父さん。アントニオは、会社へ行っても食堂入っても病院行っても、アントニオ。行く先々で「仕事モード」とか「お客さんモード」になるのは、スペイン語的感覚ではかえっておかしいみたい。

なるほど、だから、兄弟も家族も友だちも先生もみんな、名前を呼び捨てなわけだ。先生は先生である前にバネッサで、ええそうよ、母親だって母親である前に女で、とかじゃなくて、エバ。ちなみに結婚して姓が変わることもない。生まれてからずーっと、「そのひと」。「個」とか、考えちゃうよなあ、そりゃ。どこまでも自分であり続けなければならないんだもん。それはそれで、ものすごいストレスだろうなあ。なんて思うのは、「なりなりてなる」のがベースの、日本語人な私だからかしら? そういう私は、まともな日本語人として社会の一員になりそびれ、何の因果かユーラシア大陸の反対側の端なんぞで「イッピ」もどきに「なった」、らしい。ああ、哀しからずや、ですよ。スペインの空の青にも日本の海の青にも染まることができず。今日も心はぶーらぶら。

*1: ニーニャはこの「ラブ&ピース」カーに、例のネズミの、頭に大きなリボンをのせた方の人形も押し込み、またがって上機嫌で室内を移動している。狭いがキッチン完備の車内で、フラワー・チルドレンのジミー&ジェーン(ともに仮名)と、アメリカン・コマーシャリズムの特攻部隊ネズミの彼女は、いったいなにを喋っているのだろう。なんて難しい顔してみせる私はけっこうなネズミファミリー好き。大学時代の誕生日は毎年東京ネズミーランド。いまもネズミ定着率が比較的低いヨーロッパにいながら、わざわざ隣国のユーロネズミーに2回。現在の夢は、移住後にできた東京ネズミーシーに行くこと! スペイン語で売春婦を意味する「プー」もかなり好きです、ハイ。