一日中国人養子

いつもニーニャにおさがりの服をたっくさんくれる1歳上のIちゃん宅にお邪魔した。ワンコ3匹に囲まれてニーニャ、いつものように固まる……と思いきや、「ワンワン! ワンワン!」と大興奮。「犬好きにあらば人間にあらず」と広言する(そして私は子ができるまで犬は苦手だった)ツレの「かわいがりかた」を素早く見てとると、同じように背中を撫でたりするし。へー。その後も、頭上の梢をリスがわたりゆくのびのびとした広い敷地の芝生を転がりながらワンコたちと遊びまくり、何時間経ってもびっくり顔で「ワンワン!」とこちらに報告を繰り返し、疲れた彼らがそっと木陰に退避して休んでいると、両手で「ない、ない」のサインを出しながら、「ワンワン? ワンワン?」とつぶやきつつ探し回っていた。いやー、びっくりした。犬好き犬嫌いは環境で決まるものではない、のかもしれないね。(ちなみに来月あたまは、Iちゃんのご両親の結婚式〜!)

兄弟親類がいればそれもよし、犬猫いればそれもよし。日常的にかかわる生命の数が多いほどその人を優しく受け止める「ネット」ができるのでは、というトンビさんの先日のことばを、犬やリスやハチやIちゃんのお兄ちゃんたちと賑やかにバーベキューをしながら精神科医であるIちゃんパパに話すと、そうかもね、とのことだった。Iちゃんママも、「たしかに、私が相手できないときでも、Iは勝手にワンコたちを遊び相手にみつけたりして、ストレス少ないかも」と。ああそれはいいなあ、と、ニーニャ版の頻コールを毎日一身に受けている身として、つくづく思った。

スペインは核家族化が進んで、いない。出生率は日本を下回るほどなのだけど、とくに住宅の価格が尋常じゃなく高いため(先日ドイツから越してきたひとは「東京以上」と言っている)、若夫婦だけで住む、あるいは同棲、なんてのはけっこう夢物語なこと。20代で親と同居は少なくないし、家を出るといっても、学生のみならず社会人ですらアパートのシェアが一般的。さらには子どもができても共稼ぎしないと経済的に難しいことが多いので、保育園の送迎や親が帰宅するまでの子どもの世話は、ごく近所に住む、もしくは同居するおじいちゃん・おばあちゃんが行うことが多い。

このところ毎日公園に行き、いろんなひとといろんな話をしている。一昨日、夜9時に子ども3人と夫と妹一家と両親とで夕涼みにきていたママは、「あなたのように親類のサポートがない状況のひとが子育てをするのは、いまのスペインでは本当に大変なことでしょう。でも私はそのかわり、子どもについて、『いつもなにかが欠けている』きもちを味わっているの。保育園の友だちのこともいちばん詳しいのは、彼女のおじいさん・おばあさんなわけだし」と話してくれた。たしかにいまはニーニャを独り占めしている「快感」は、それが「支配」に傾く危うさを秘めているとはいえ、あるかも。「私がいなくなったら、お前さん、たいへんでしょう?」って。ああこれが恋人だったらヤな女だね。そしてもしこれが我が母だったら、ぞぞぞ。

さて、親戚もいず犬猫も飼えずツレは毎日夜9時過ぎに帰宅で土曜も勤務の「ニーニャとマミーのふたりっきりシーソーゲーム」な我が家で、ニーニャの頻コールをどう受け止め、あるいはどう受け流すかといいますと。……なんて整理して書けるくらいなら苦労はないのだけどね。ともかく外に出てます。午前中は買い物、昼寝を挟んで午後は公園。……なんて書きつつ今朝はマミー疲れてたので家でビデオ見せながら「はよねろなかんと、おろろんばい」とサボっていたのだけど。ともかく子の気分転換よりも母の気分転換の方が大事。なぜなら自分のことなら裁量できるからね、それがいいとこ「辛うじて」でも。子の気分転換は、あくまで余力があるときに。子どもより親が大事と思いたい、って本気で言ってどうする! と自分につっこみながらも、だいたい母がごきげんだと子もごきげんだという不思議。

ちなみに昨日は公園で、国際養子縁組でこちらに来た中国オリジンの女の子に遭遇。マドリードだけでも年間約1,000人の中国人女児がやってきてるのです。なぜブラピはアフリカンとアジアンな養子を、と不思議なひとは日本的な感覚だとわりと多いと思うけど(私もツレもそうだったことから類推)、スペインでもそんな人種の違う子の養子はごく普通のこと。あまり「○国人として」「○○家の血を引く者として」という感覚がないのかな、それが一種の風通しのよさであるのかもしれない。そしてニーニャはというと、1歳半でスペインに来た4歳のイサベラちゃんにあいさつされ、珍しく超絶号泣。ひょっとしたらスペイン人を中心とした「外国人」に囲まれて育っているから、自分の顔が東洋人だとまだわかっていないのでは。というのがマミーちゃんのうがった想像。「わあ、外国人だ!」と思ったのでは? はてさて、どういうアイデンティティ形成をするのやら。まあともかく外に出ればこんなかんじで、「一日中国人養子」みたいに可愛がってもらえてます。