それだからこそ、子どもをもつというのは

中森明菜「セカンド・ラブ」*1の何度も書いては書けずに投函できなかった絵はがき(違ったかも)のように、今日はうまくエントリーがまとまらないので、スペインでの育児を大いに支えてくれたカルロス・ゴンサレス医師の『うちの子、食べてくれなくて』(原題:"Mi Niño No Me Come")の訳の一部を紹介させてください。

「おっぱいは、オン・デマンドで」


 なぜ自律授乳が良いかということについては、すでに前章で説明しました。赤ちゃんにとって、規則正しい時間におっぱいを飲むのは難しいのだということを、思い出していただけるでしょうか。そう、まさにこのような時間のばらつきこそが、赤ちゃんの必要性に応じておっぱいの成分を調整できるようにしているのでした。
 私たちの「文明化」は、本物の自由にたいして恐怖心を抱く、といいます。おそらくそのために、多くのひとがどうしても自律授乳を受け入れられず受け容れられず、そこに制限を加えようとするのでしょう。さらに嘆かわしいことには、しばしばこのような「制限」が、実に巧妙に、いかにも同じことを述べているふうを装って押し込まれているのです。しかし、同じではありません。代表的な間違い例をいくつか見てみましょう。

  • おっぱいは、赤ちゃんが欲しがるだけあげること。つまり、授乳間隔がけっして2時間半以下/4時間以上とならないようにします。


 これは「自律」ではありません。それは「フレックス・タイム」であり、まあないよりはマシですが、やはり自律授乳とはいえません。なぜ、2時間半以内におっぱいを飲んではいけないのでしょう? あなたには、食事を終えた直後に通りでばったり友人に出くわして、じゃあコーヒーでも飲もうかとどこかへ入る、なんてことは、一度も起こりませんでしたか? あるいは、ひょっとしたらそんなときあなたは、友人にこう言うのでしょうか。「そうね、よかったらあなたはコーヒーをどうぞ。私もつきあうから。でも、たった半時間前にごはん食べたところだから、えっと、私は3時まではなにも口にしないけどね」と。

  • 新生児の時期は自律授乳が良いでしょう。ただし赤ちゃんはその後、次第に自分のリズムを身につけるようになります。


 すべての赤ちゃんがリズムを身につけるわけではありません。それに、リズムを身につける赤ちゃんにおいても、「2時間ごとでもなし、3時間ごとでも、4時間ごとでも、なしなしなし」なんて、まるで軍隊マーチのようなリズムでいく子は、ほとんどいません。続けざまにおっぱいを飲んだかと思うと、次はずいぶん授乳間隔が開き、と思うと、もっと長いお休みがある……。そう、ふつう選ばれるのは、チャ・チャ・チャのリズムです。授乳のリズムは、といっても、あくまでもリズムがある場合の話ですが、ある日とその次の日は似たものになりがちです。たとえば、もしもラウラちゃんが、午前中には続けざまにおっぱいを飲み、午後にはたっぷりとお昼寝をすることが多いようなら、おそらくその翌日も同じようにするでしょう。しかしまた、彼女がなにかあなたをびっくりさせるようなことをするかもしれません。まさにそれだからこそ、子どもをもつというのは素晴らしいことなのです。そう、子どもたちは人間なのです――ロボットではなく。

  • 次第に授乳間隔が長くなるように努力しましょう。


 これもまた「自律」ではありません。なぜ、こうもしゃかりきに授乳間隔を長くすることに固執するひとたちがいるのでしょう? あなたの赤ちゃんがおっぱいを欲しがり、そしてあなたがおっぱいをあげたいとき、いったいそのどこに他人のコントロールが介入する余地があるでしょうか。それなら、キスの間隔も長くすべきなのでしょうか? あるいは、日曜日や給料日や夏休みの間隔が引き延ばされるとしたら、あなたはどう思いますか? おそらく経営者なら、日曜が10日ごとに来て、給料は43日おきに支払い、夏休みを一年半に一度与えるという内容に、さぞかし満足することでしょう。しかし彼らだって、そんなことは提案してみようとすらしませんよね。と、いうことは。もしも赤ちゃんが喋ることができて、そして誰かが「授乳間隔の引き延ばし」を企んでいるのだと知ったならば、まさにこれと同じような強い怒りを表明するのではないでしょうか。(なお、授乳間隔の延長がもたらす弊害についてのより詳しい説明は、後述「間食はよくないこと?」の項をごらんください)


いいねえ、カル・ゴン先生。
しかも日本好きだったりするのも(ご本人がメールでおっしゃってました)、個人的にすごくうれしかったりして。
ああ、なんか元気出ちゃった。

*1:「スローモーション」の間違いですね。って、これもあやふやなのですが。しかし今週から保育園が夏休みで「密着24時間保育園」がはじまり、頭がもうろうとしていたようです。以上、翌日に記す。