地図好きの動物園

どういうわけか、こ初々さんは大の地図好きである。本物の地図も好きなのであるが、文字ばかりの本を手にして、「西にいって、左に曲がってぇ、駐車場はぁ」などとぶつぶつ言っていることも多い。文字ばかりで挿絵も何も描かれていないほうが、かえって自由に読めたりするのだろう。絵本の絵は、場合によっては想像の翼を折る。

その地図好きをつれて、先日京都市動物園に行ってきた。京都市動物園は、京都市左京区の南の端、岡崎にある。この地区は平安神宮、市立美術館、国立近代美術館、京都会館、府立図書館、市営グランド、テニスコート、など、京都の文化的施設が一同に集められおり、京都市民にとっては、「岡崎公園」として親しまれている。大学の近くでもあるので、学生時代は「おぉお授業をさぼってぇ」、ゴリラの京太郎君を見ながらボーっとしてたりしたのだった。

この岡崎公園、巨大な地下駐車場が整備されていており、当日も、叔母から廃車寸前に貰い受けたダイハツストーリアで乗り込んだ。地下駐車場の出入り口近くに置かれていたのは、一枚の動物園案内パンフレット。いや、パンフレットというほど立派なものではなく、葉書より少し大きいくらいの一枚の紙に、モノクロ印刷された地図。その地図には代表的な、つまり動物園にいそうな一般的な動物のイラストと名前が書かれていた。キリン、シロクマ、ライオン、チンパンジー、などなど。

これを連れて行った地図好きに渡してやると、もうしっかりと握り締めて離さない。でもって、いくところいくところ、大して動物も見ないで、「熊さんどこ?」「ライオンさんどこ?」と、目の前の動物が地図上のどこに書かれているか、ということにご執心。「どこっ?て、目の前にいるじゃない」と、こちらとしては、動物園に連れて行った労力の元を取りたいわけで、それぞれの動物に関心を向けようとするのだけれど、一通り見てしまえば、「つぎ何見るの?」とおざなりな関心しか示さない。挙句の果てに、池にアメンボが群れていたので、「ほら、これアメンボだよ」と教えてやると、例の地図を見ながら「アメンボどこ?」。


『子どもなら目の前にいるリアルな、珍しい動物の方に興味を惹かれるだろう』と思うのは、大人の勝手な考え。子どもにとっては、この世界が薄っぺらい一枚の紙の上に写像されていることのほうがエキサイティングなのかもしれない。

とは言うものの、あんまり子どもらしくない、この地図好きで記号好き。誰の影響? 私か? えっ? 岡崎公園の説明がもう地図的だって? うーむ、そうかもしれん。 

オット初々