仲間の力

supply72009-03-17


先週の金曜日、コジポンの卒園式がありました。とても素晴らしい式で卒園児の入場の時から涙腺は緩みっぱなしの母でした。

卒園式での事、式典の前に記念撮影があり、親子揃って集合写真をとりました。コジポンのクラスメイトで自閉症児のはーちゃんがいつもと違う雰囲気に落ちつかない様子でした。子供達は椅子に着席してその後ろに保護者が並ぶという配置でしたので、私達は深くは考えずにはーちゃんの隣にお母さんが並ぶように配列を変えてしまったのです。 そこからはーちゃんの気持ちが崩れてしまい、いざ卒園式を始めようと入場の準備をする子供の列に戻るのに、お母さんと別れたくなくてはーちゃんは泣いて怒り出しました。式が始まってもはーちゃんは落ち着かず、声を上げ、のけぞって拒絶の意思表示を続けていました。担任の先生が抱きしめて落ち着かせても、なかなか落ち着かず、式の半分近くが進むまで、はーちゃんの抗議は続いていました。でも、担任の先生の根気強い対処で次第に落ち着きを取り戻し、はーちゃんの証書の授与も無事に済ませることができ、その後の歌や贈る言葉などが粛々と進められていきました。

ここで、すごいなあと感心したのが不測の事態が起こっても、子供達が全く動じずに式に集中していた事。そして誰も迷惑そうにすることもなくはーちゃんのあるがままを受け止めているように見えた事。そして列席している保護者達からも同じ反応が感じられた事でした。少し心配そうにしてたのははーちゃんのご両親だけだったように見えました。全く動じないといいましたが、無関心というのとは違うんです。その時の空気を文字に表すのはすごく難しいのですが、「はーちゃんという人間を理解してるからこその対応」という感じなんです。彼のあるがままをみんな普段の生活から自然と受け入れているから、自分達がどうしたら良いかが自然と分かっているようなんです。

武蔵野市の保育園では障害児(主にダウン症児や自閉症児)の受け入れを積極的に行っており、市内のた大抵の保育園では年中、年長クラスには一人づつ障害児を受け入れて一緒に保育を受けているようです。これは障害児に集団生活を経験させることで発達を促すという療育的な要素があるようなんですが、健常児(この表現はあまり適切ではないかもしれません。)にとっても、この保育方針はすごく意味のある経験だと感じています。
まだ幼くて、柔軟で吸収力の高い幼児期にごく自然な距離に障害をもった友達がいるという環境は障害への理解や障害をもつ人への配慮などが自然と身につき、なんの偏見ももたずに、クラスメートの一員として共に遊び、共に過ごす事ができるって素晴らしい事ですよね。そして実際、子供達はみんな、はーちゃんの事が大好き(クラスで一番もてていて、お嫁さん候補が一番多いのです)で、でも少しだけ配慮が必要なのお友達だから、いろいろ手助けが必要なんだ。という事は十分に理解していて、そういった場面ではごく自然にみんなが譲りあったり、助け合ったりしていて、弱い者への配慮が自然と身についているのが良くわかります。初々さんの記事にある「誰か、何かの役に立ちたいという思い」がはーちゃんという存在によって、子供達の中に自然に芽生えていったようです。
年中組からはーちゃんが入園して2年間、毎日一緒に生活を共にすることで築きあげられた子供達の絆のようなものを感じました。


卒園式の後、はーちゃんのお母さんと話していたら「せっかくの卒園式なのに、うるさくしちゃってごめんなさい。みんなに迷惑かけちゃった。」と言うので「はーちゃんのそういう部分も全部ひっくるめて、今日ぶどう組のみんな一緒に卒園式を迎えられたんだから、誰も迷惑だなんて感じてた人はいないよ。子供達だってそうだよ。」ってな感じの事を言ったら、お母さんは「ありがとう。」って涙ぐまれていました。はーちゃんのご両親はみんなに迷惑をかけているのでは心配していたようです。
いいえ、迷惑なんてとんでもない、子供達がはーちゃんという素敵な子と出会えた事に感謝しているぐらいなんですよ〜!おかあさん!
4月からは都の養護学校に通うことになったはーちゃん。お父さんが「こういう環境(健常児との集団生活)で過ごす事がなくなってしまうのが寂しい」と言っていました。


初々さんが鷲田先生の言葉を引用されて書かれていた

「身の回りのことが自分でできなくても、出来る人、手伝ってくれる人をみつけることができたらいい。困ったときに「助けて」と言える相手がいればそれでいい。自立とは、いざという時に自分を助けてくれる人のネットワークができていること」

障害を持つ人が自立できる社会の実現には子供の頃から、障害の有無に関係なく垣根のない集団生活を送ることも一つの役割を果たすのではないかと感じました。
「仲間の力」が自立への一歩に繋がる環境を作って行きたいですね。