アンパンマン、GO!!

supply72008-11-26

おはよおはよ、こんちはこんちは。最低気温ついに氷点下の寒い寒いマドリードです。でも「お隣さん」のあたたかな生活を覗いて、きもちはポカポカ。さらに、仲良しの友だちからこんな嬉しいメールが届いたので、お裾分け〜。「妹もあと1月で産休に入るので、不安や期待でいっぱいの時間を、「七人のサプライ(ズ)」を読んでさらに不安や期待でいっぱいになればいいなと思っています。良いサイトを企画してくれて本当にありがとね〜。」 こっちこそありがとよ、ハマ子!


ニーニャは来週で2歳。言葉はたぶん、遅い方。なんでも、バイリンガル環境の子は言葉の初発が遅いとか。とはいえうちの場合、のんびり屋のこの子のペースに起因する部分も多いかも。ふだんは、「ワンワン」「プイ(プリン)」「アッパ(葉っぱ、って"H"を発音しないのはスペイン式?)」などの名詞っ子。それが今週、言いました。「あっち、行っちゃった」(おー!) 「パパ、開けて」(おー!!) 「アキ(ここ)、座る」(あー、スペイン語と混じってる…) 「めんめん(麺類一般)、ノー!」(おー、今後はそうやってはっきり拒否されるようになるわけだ…) ちなみに、ジャムおじさんの運転するメカは「アンパンマン、GO!」だと思っている様子。二語文?

おつむが大きくて、全体的にぷくぷくしてて、まだ幼児っぽさの残るよちよち歩き。通りすがりのひとに褒められるときの言葉の圧倒的な第一位は、「rica(リカ=英語のrich、豊かな、肥えた)」。私自身は食べ物が美味しいときによく使う形容詞なので、こう言われると、どうも娘が中尾彬絶賛・セゴビア名物の丸焼き用食材「乳飲み仔豚」にでも見えているんじゃないかと疑念を抱いてしまう。自分からは、ひとの子どもにはなかなか使えない。でも考えたら、和歌山での赤ちゃんの褒め方「よう肥えちゃあよ」と同じだわ。そういえばザ・直接的な「gorda(ゴルダ=デブ)」という言葉も、明らかにニーニャを褒める文脈で何度も使われたぞ。っていうかほんとは頭が大きいだけで、少し痩せ型なのにねー。

通りすがり褒め言葉の第二位は「guapa(グアパ、美人)」、これは大人にも一般的に使われる単語。しかし日本なら子どもには「美人」ではなく「可愛い」だよね。そう思って自分はひとの子どもに「bonita(まさにボニータ)」を使ってみても、いまいちしっくりこない。しかもこの単語、男性形の「bonito」は魚のカツオをも意味するから、沖合いでは要注意(なんにだ)。スペインではやっぱり、ペネロペ・クルスもうちの仔豚もまとめて「グアパ」らしい。どうもペネロペに悪い気がするけど、ま、いっか。


一方で保育園の友だちなど少し親しい間柄の場合、日本語でなら「素直でいい子」「元気があってワンパク」などと褒めたい。でもそれらをスペイン語に直訳すると、それぞれ「従順な子」「乱暴者」というニュアンスが強くなって、どうしてもなんか違ってくる。素直さを評価する土地じゃないし、野生の生命力で文明的な規律を乱すのもヨーロッパ的にはノーなんでしょう。馬(牛?)の生皮を剥いで機織小屋に放り入れたスサノオノミコトがヒーローの国とは違います。

同じく「えらいね」「かしこいね」(これも和歌山で多用。なお一部地域では発音が「かっこい」になり、標準語の「格好良い」と混乱する危険大なので注意)も、うまく訳せない。べつに本気で「偉大」とか「インテリジェント」とか思ってるわけじゃないし。しかも英語の「クレバー」にあたる「lista」という単語は、「抜け目のない利口さ」を意味に含んでしまい、風車につっかかる狂人を是とするこの国では、相手を軽蔑する表現になりかねない。日本では「機転がきく」のはプラス評価だけど、スペインでは「せこい奴」になるんです。

「望まれる子ども像」って、場所によってこんなに違うんだなあ。表面的な言語の違いだけではなくその「文脈の違い」にも、ニーニャは大いに困惑してるだろう。まあ、そういう価値基準がいろいろある「北朝鮮っぽくないかんじ」も、けっこういいべ? …というのは私の勝手な価値基準なんでした、ハイ。がんばってねー、ニーニャ。


ちなみに写真は、先日行われた友人宅の赤ちゃん披露パーティーにて。左から(犬)、ニーニャ、Sちゃん(22ヶ月)、Yちゃん(10才)。順番に「日本人割合」は100%、75%、50%、頭の大きさと手足の長さに反映されているような…。