嘘つきカンガルー

ちょうど先週の今ごろ、うちのぼっちゃんは高熱が3日ほど続き、それこそ高いときは40.2度という今まででも最高記録を更新。しかし、そんな高熱を出しながらもあるときを境にサッパリと熱が下がり、言葉の使い方や様子まで発熱前と発熱後ではまるで通販の「使用前/使用後」のような変わりよう。

噂では「3歳でOSが変わる」と言われているが、もしかしたらそれに類するようなことが起こったのかもしれない・・・なんて思いつきで書いてみる。

それにしてもちょうど先週の日曜日(11月2日)に三歳になったぼっちゃん。この3年って、いったい本人にとってはどのような意味をもつものなのだろうか。しかし、こうした問い自体が、大人一般の、常識的な時間概念のもとでの問いであり、子どもにとっての時間(あるいはわれわれが便宜上、ここで「時間」としような、持続的なもの・・・いや、持続という言い方自体がすでに・・・以下同様。)がどのようなものであるかわからないという意味ではまったくわれわれの〈外〉である以上、そこに意味を求めること自体、あまり意味がないのかもしれない。しかし、だからこそ、彼が生まれてきてからのこれまでの時間というものを考えると、なんだか気の遠くなる気がする。

話がややこしいが、やはり思いつきで書いているのであまり意味は無い。

そういえば、このあいだ、妻と二人で車に乗っているとき、後ろの車に追越された。僕らが住んでいる町はけっこう観光地としても有名なので、県外ナンバーの車は珍しくない。しかし、僕らの車を追い越したはいいものの、そのあとは山を降りた町まではずーーーっと一本道で、意外と反対車線も交通量が多く、しかも、数台先を走っているのはもみじマークのついた軽トラで、すぐに僕らの乗った車に彼らの車は追いつかれてしまった。
すると、ある赤信号で、突然ガチャッと運転席のドアが開き、人が出てきた。運転手だ。縞模様の坊主頭にサングラス、そして彼のTシャツの背中には「不良親父」の文字・・・。そして車内では助手席に乗っていた女性が運転席に移っている様子。

僕の想像では・・・、
不良親父「あーーーっイライラする・・・なんや、あのクソ軽トラがっ!」
助手席女性「もーーーっそげんイライラせんでよ!前がつまっとるっちゃけんあんたがそげん腹立てたって意味無いったい!ちょっと落ち着き!わかった。もういい。運転代わるけんどいて。」
不良親父「なんで代わらんといかんとや!」
助手席女性「あんたが事故って死んでもかまわんけど、子どもがおるっちゃけんね!あんたわかっとっと?ねえ、どいてよ。どいてって!」

もちろん、僕らは彼らの車のなかに子どもがいるのを見たわけではないので、あくまで僕の想像にもとづくフィクションの域をでないのであるが、親を3年もやってると、車のナンバーが単なる数字の配列か、あるいは何かを意味しているのか―そう、子どもの名前を意味しているかどうかが、なんとなくわかる*1。例えば、「73」→「ナミ」、「708」→「ナオヤ」、「38」→「サヤ」という具合だ。調子がいいときには薄ぼんやりと子どもの顔まで見えてくることだってある*2

彼らの車のナンバーからは、やはり子どもの匂いがした。縞模様の坊主頭だろうが、不良親父と書かれたTシャツを着てようが、きっと彼は父親なのだ。

確かに、見た目には怖い。はっきりいって、彼が車から降りてきたとき、「チンタラ運転してんじゃねえ!このボケ院生が!」と因縁つけられて殴られるんじゃないかと不安になったが、それは単に彼の見た目のせいだ。
見た目は怖いけど、きっと、彼にも3歳の頃があり、そして、ずっとその前には、可愛い赤ちゃんのころがあったのだ。

そう思うと、世の中の悪いことも、悪い人も、すこし許せる気がする・・・わけないな。

*1:半分嘘です。

*2:さすがにこれは嘘です。