おばちゃん毛だらけ灰だらけ

 妹に息子が生まれてはや5日。沖縄ではもう、退院しているころでしょう。とにかく一目見たい父が、今日、飛んでいます。いまごろ、シャッター押しまくっているころでしょう。
 妹の息子。つまりは甥、ですが、生まれてみると、なんともはや不思議な存在です。自分の日記にも書いたのですが、生まれたと聞いた瞬間の目頭の熱さは、自分のときのそれよりも高温…というか、自分のときはわけくちゃわからず、泣くとかそういう次元にいなかったのですが、なにしろ、大きくてあたたかいものに包まれました。妹の出産に当たっては、ヒコが予言めいたことを口走ったり、母と私のお腹がずーっと痛かったり、父と母が「それまで見たこともなかった満ち潮の風景」を前日に見ていたりと、そりゃまぁこじつけだと言われればそれまでレベルの、でも、当人たちにとっては「やっぱりなにかつながっているんだ」と感慨を深くできたことがいくつかありました。兄弟姉妹と言っても、それぞれのあり方があるとは思うので、一概には論ぜませんが、私と妹は、たぶん、かなり仲のいい姉妹なので、その妹が子どもを産んだということに、想像以上のよろこびが押し寄せたのです。
 そして、変な話なんですが、「よっしゃ!おばちゃんがおもしろいこといろいろやって見せちゃるぞ」という気持ちが、もりもりとわき上がりました。ヒコに思うのとは、またぜんぜん違うような性質のものです。親心や母性とはまったく違うようなもの…親のそれとはひょっとしたら方角的には反対方向なんだけど、強さは同じくらいあるというようなもの。「この気持ちはなんなのだ…でも、なんかこんな感じのものって、見たことあるような…」と考えて、ピカーーンと思い当たったのは、そう「寅さん」でした。
 私自身は、ヒコには申し訳ないですが、あまり母性やら親心やらが似合わないというか、いまだに使いこなせてないというか、そういうものに対して、照れくさいような感情を抱いているのですが、「『寅さん』ならまかしとけ!」と強く思いました。今はまだホヤホヤの甥っ子が、この先どう育って生きていくかはわからないけど、親や回りの世界との関係で息が詰まってしまった時、「まーまー、なんとかなるから。ほらほら、おばちゃんを見てごらんよ、結構毛だらけ猫灰だらけお尻のまわりはクソだらけ、ってね!」とは言ってやれるな、と強く思ったわけです。さらに「あ〜、寅さんって、光男がいたから旅に出れたんだな…」と、根拠のない確信も得ました。
 まだ名前も決まっていない甥っ子よ、おばちゃんをおばちゃんにしてくれてありがとう!